用途変更工事中は仮使用承認なしに使用できます

建築基準法

シリーズ「知らんけど」 ~用途変更工事には工事中の使用制限はありません~

はじめに

先日、こんな相談を受けました。

「テナントビルの一部を改修して用途変更する計画です。工事中は仮使用承認を取って、一部だけ営業を続けたいのですが」

新築工事や増築工事であれば、確かにこの発想は自然です。工事中でも完成した部分から先に使えるようにする、仮使用承認という制度があるからです。

ところが、用途変更の手続きを見てみると、この仮使用承認という制度そのものが出てきません。今回はその理由と、そこから見えてくる用途変更ならではの構造についてお話しします。

仮使用承認とは何か

仮使用承認は、建築基準法7条の6に定められた制度です。新築や増築などの工事において、完了検査が済む前の建物であっても、安全上・防火上・避難上支障がないと認められれば、その建物や部分を先に使うことができます。

この制度が生まれた背景には、昭和52年に増築工事中の百貨店で起きた火災事故があります。工事中の建物の使用のあり方が問われたことを契機に、一定の安全性を確保したうえで工事中でも使用を認める仕組みとして制度化されました。

誰が判断するかで、性質が変わる

仮使用承認には、実はもうひとつ知っておきたい点があります。誰がその判断をするかによって、性質が変わるということです。

もともとこの認定を行えるのは特定行政庁だけでした。特定行政庁による認定では、避難施設の代替措置を認めるかどうかなど、裁量性のある判断が含まれます。現場の状況を見て、個別に安全性を判断する余地があるということです。

平成27年6月からは、指定確認検査機関もこの認定を行えるようになりました。ただし指定確認検査機関が行えるのは、あらかじめ定められた告示の基準に適合しているかどうかを確認する、裁量性のない機械的な判断に限られます。現場ごとの個別事情を考慮するような判断が必要な場合は、今も特定行政庁だけが扱う領域です。

同じ「仮使用承認」という言葉でも、どちらの主体が判断するかによって、その中身は大きく違うのです。

用途変更に、仮使用承認は出てこない

ここからが今回の核心です。

建築基準法87条は、用途変更の際に準用する規定を列挙しています。そこに挙げられているのは、法第6条・6条の2・6条の4・7条1項・18条の一部などで、仮使用承認を定めた法第7条の6は含まれていません。

「では用途変更の工事では、先に使うことができないのか」と思われるかもしれません。しかし、もう少し条文を追ってみると、違う景色が見えてきます。

実は87条の準用規定には、法第7条の2も含まれていません。法第7条の2は、新築等の建物について「完了検査を受けるまでは、原則としてその建物を使用してはならない」という、使用制限そのものを定めた規定です。

仮使用承認という制度は、この使用制限があるからこそ存在します。原則として使ってはいけないものを、例外的に認めてもらうための手続きだからです。

ところが用途変更には、この7条の2による使用制限そのものが準用されていません。つまり、用途変更の工事には、そもそも「完了検査を受けるまでは使ってはならない」という縛りがかかっていないのです。縛りがなければ、それを例外的に解除してもらう仮使用承認という手続きも、当然ながら必要ありません。

さらに言えば、法第7条1項は用途変更にも準用されていますが、その文言は「建築主事の検査を申請しなければならない」ではなく、「建築主事に届け出なければならない」と読み替えられています。工事の完了を検査によって関門のように確認するのではなく、届出という形で事後的に報告する。用途変更の手続きは、そもそもこうした性格を持っているのです。

つまり、用途変更に仮使用承認が出てこないのは、制度に穴があるからでも、不便を強いられているからでもありません。そもそも新築のような使用制限がかかっていないという、構造上の違いによるものです。

まとめ

今回のポイントを整理します。

仮使用承認は、特定行政庁が判断するか指定確認検査機関が判断するかで、裁量性のある判断か機械的な判断かという性質が変わります。そして用途変更の手続きには、この仮使用承認そのものが出てきません。

その理由は、用途変更には新築等のような使用制限(法第7条の2)自体がそもそも準用されていないためです。制限がないのだから、それを例外的に解除する手続きも要らない。届出という形での報告にとどまるのも、その延長線上にあります。

これは裏を返せば、工事を進めながらその区画を使い続けられる可能性がある、ということでもあります。ただし、実際にそれが可能かどうかは、工事の内容や消防法など他の法令、特定行政庁の実務上の取扱いによって変わってきます。法律上の建て付けを正しく理解したうえで、計画の早い段階で確認しておくことをお勧めします。

用途変更に伴う工事のスケジュールや手続きや判断について、お困りのことがあればお気軽にご相談ください。https://www.imknot.co.jp/contact.html

コメント