見落としがち、「準用工作物」

建築基準法

はじめに

先日、こんな相談を受けました。

「テナントビルの法適合調査をしていたところ、敷地の擁壁と看板について、確認済証も検査済証も見当たりませんでした。建物ではないので対象外だと思っていたのですが、そういうこともあるのでしょうか」

実は、擁壁や看板についても確認済証・検査済証が残っていないケースは、決して珍しくありません。建物本体だけに気を取られていると見過ごしてしまいがちな、工作物という制度についてお話しします。

建物ではないのに、規制されるものがある

建築基準法は「建築物」だけでなく、一部の「工作物」にも規定を準用しています(法88条)。

高さの基準を超えると確認申請の対象になるものとして、煙突は6m超、柱状のものは15m超、広告塔は4m超、高架水槽は8m超、そして擁壁は2m超と定められています。これらは「準用工作物」といわれています。建物ではないからといって、規制の対象外というわけではありません。

さらに、高さの基準とは別に指定されている工作物もあります。製造施設や貯蔵施設、遊戯施設、コンクリートプラント、自動車車庫といったものです。観覧車やコースターなどの遊戯施設も、これに含まれます。

これらの工作物には、もうひとつ特徴があります。用途地域による制限がかかるという点です。 建築物と同じように、その用途地域に立地できるかどうかが問われるということです。工作物であっても、周辺環境への影響が大きいものについては、立地そのものが規制されているわけです。

このように工作物といっても幅は広いのですが、既存建築物の調査で実際によく問題になるのは、多くの場合「擁壁」と「看板」です。この2つについて、もう少し詳しく見ていきます。

擁壁は、調査時に注意が必要です

擁壁も広告塔も、本来は確認申請と完了検査を経て、安全に築造されているかどうかが確認されているはずのものです。調査においては、まずその記録があるかどうかを確かめることになります。

ただし擁壁の場合、注意しておきたい点がいくつかあります。

確認済証がなくても、別の許可を受けている場合がある

宅地造成等規制法や都市計画法などの開発許可・宅造許可を受けた擁壁については、建築基準法の確認・完了検査の規定は適用されません(法88条4項)。これは安全性の審査が不要という意味ではなく、別の許可制度の中で審査されるという、手続きの振り分けです。

したがって、建築基準法の確認済証が見当たらないからといって、直ちに無許可の擁壁だと判断することはできません。開発許可や宅造許可の記録が残っていないか、他の許可制度もあわせて確認する必要があります。

2mを超えないものの安全性をどう確認するか

確認申請が必要になるのは高さ2mを超える擁壁です。裏を返せば、2mを超えないものについては建築基準法上の確認申請の記録が存在しません。ではその安全性をどう確認するのか。これは調査の実務上、悩ましい課題です。

さらに難しいのが、築造当時は2mを超えていなかったものの、その後にいずれかの地盤面が変更され、結果として2mを超えることになった場合の扱いです。こうしたケースについては、特定行政庁の判断を仰ぐ必要が出てきます。

高さの算定方法にも地域差がある

そもそも擁壁の「高さ」をどこから測るかという点も、地盤の高低差を基準にするのか、擁壁が受ける土圧の高さを基準にするのかなど、特定行政庁によって扱いが異なることがあります。

同じ擁壁であっても、地域によって規制の対象になるかどうかの判断が変わり得るということです。調査にあたっては、この点もあわせて注意しておく必要があります。

広告塔も、調査時に注意が必要です

広告塔についても、判断が分かれやすい点がいくつかあります。

建築物と一体か、そうでないか

まず押さえておきたいのが、屋上に設置される広告塔の扱いです。

広告塔が建物の外壁面と同じ面にあったり、パラペット部分を広告面として使っていたりして、外観上も構造上も建物と一体とみなされる場合は、その広告塔は建築物の一部として扱われます。一方、屋上に設置された広告塔が建物と明確に切り離されていて、一体とはみなされない場合は、工作物として扱われます。

同じ屋上の広告塔でも、建物と一体なのか、独立した工作物なのかによって、適用される制度が変わってくるということです。そしてこの一体か否かの判断についても、特定行政庁によって取扱いが定められており、その内容が異なることがあります。

工事が分かれることで生じる落とし穴

もうひとつ、実務上の落とし穴があります。

基礎および鉄塔や鉄柱などの「本体部分」と、広告を掲出する「看板部分」とを分けて工事をする場合です。

広告塔の本体となる鉄塔や柱の部分は、単独であれば、高さ15mを超えなければ工作物確認申請が不要です。この時点では工作物確認申請は不要となります。

しかし、その後のテナントによる内装・サイン工事の段階で、看板を付けることで高さ4mを超える「広告塔」となり工作物確認申請が必要となる場合があります。

基礎および鉄塔等(高さ15m以下)を築造するよう注文した者と、サイン工事として看板(当該看板の高さ4m以下)を設けるよう注文した者とが別な場合があり、どちらが「広告塔」の工作物確認申請をしなければならないか、判断が分かれる点となります。

工事が2段階に分かれることで、確認申請の義務を負う「注文者」が誰なのかが曖昧になりやすくなります。その結果、広告塔全体としては確認申請が必要な規模であるにもかかわらず、双方とも手続きに至らないまま工事が完了してしまう、ということが実際に起こり得ます。これは、どちらか一方に落ち度があるというより、工事の主体が分かれるという構造そのものが生む落とし穴だといえます。

そのことにより、工作物確認申請がなされていない、検査済証が交付されていない、などの状況が生じてしまうということです。

まとめ

今回のポイントを整理します。

建物でなくても、一定の規模を超える工作物には確認申請が必要です。製造施設や遊戯施設などは用途地域による制限も受けます。そして既存建築物の調査で実際によく問題になるのが、擁壁と広告塔(看板)です。

擁壁については、確認済証がなくても開発許可や宅造許可を受けている場合があり、他の許可制度の記録もあわせて確認する必要があります。また2mを超えないものの安全性の確認や、後から地盤面が変更されたケースの扱い、高さの算定方法の地域差など、判断に注意を要する論点が少なくありません。

広告塔については、建物と一体か否かの判断が分かれるうえ、工事の主体が分かれることで確認申請の義務が曖昧になりやすく、その結果、手続き等が適切になされていないというケースがあります。

テナントビルや土地の法適合調査では、建物本体だけでなく、擁壁や広告塔といった工作物についても、あわせて確認しておくことが大切です。

擁壁や看板を含めた工作物の法適合状況について、お困りのことがあればお気軽にご相談ください。https://www.imknot.co.jp/index.html

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