はじめに
工事現場の前を通ると、白い看板が掲げられているのをよく見かけます。「建築基準法による確認済」と書かれ、建築主や設計者、施工者の名前が並んでいる、あの看板です。現場の周りを囲う高い塀も、見慣れた風景でしょう。
実はこの看板も塀も、建築基準法に根拠があります。建築基準法というと、完成した建物の高さや構造、防火の基準を定める法律というイメージが強いかもしれません。しかし建築基準法は、建物を「つくっている最中」の安全についても定めているのです。
今回は、普段はあまり注目されない建築基準法の「雑則」の規定から、工事現場のルールと、それを守らなかった場合の罰則についてお話しします。
「雑則」という章
建築基準法の第6章は「雑則」と名付けられています。
ここには、工事現場に関する規定のほか、仮設建築物の扱い、面積や高さの算定方法、書類の閲覧など、さまざまな規定が置かれています。以前の記事で取り上げた、建築計画概要書などの閲覧の制度も、実はこの雑則の中の規定です。
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名前の印象とは違い、実務に深く関わる規定が多い章です。
確認看板は、誰が出すのか
冒頭の白い看板は、建築基準法89条1項に基づくものです。
建築確認を受けた工事では、工事現場の見やすい場所に、建築主、設計者、工事施工者、現場管理者の氏名又は名称と、確認があった旨を表示しなければなりません。表示の様式は省令で定められていて、大きさは縦25cm×横35cm以上とされています。
ここでよく誤解されるのが、誰がこの表示をする義務を負うのか、という点です。条文上、義務を負うのは建築主ではなく、工事の施工者です。
表示が必要になるのは、工事に着手したときからです。着手の時点は、くい打ちや地盤改良、山留め、根切りといった工事が始まった時点とされています。建物の姿が見えてくる前から、看板は掲げておかなければならないということです。
この看板があることで、通りがかる人も近隣の人も、その工事が建築確認を受けたものであること、そして誰が責任を持って工事を進めているのかを知ることができます。
現場には、設計図書を
同じ89条の2項では、工事の施工者は、工事現場に設計図書を備えておかなければならないとされています。
建築確認は、設計図書に基づいて行われます。その設計図書が現場になければ、工事が図面どおりに進んでいるかを確かめることができません。現場に図面を置いておくという当たり前のことも、法律で義務づけられているのです。
工事現場の危害を防ぐ
建築基準法90条1項は、建築物の建築、修繕、模様替又は除却の工事の施工者に対して、工事に伴う地盤の崩落や、建築物・工事用の工作物の倒壊などによる危害を防止するために必要な措置を講じることを求めています。
具体的な基準は、施行令で細かく定められています。たとえば次のようなものです。
仮囲い
木造で高さが13m又は軒の高さが9mを超える建築物や、木造以外で2階以上の建築物の工事を行うときは、工事期間中、現場の周囲に高さ1.8m以上の板塀などの仮囲いを設けなければなりません。ただし、同等以上の効力のある囲いがある場合や、周辺の状況などから危害防止上支障がない場合は、この限りではありません。
そのほかの措置
根切りや山留めの工事の安全、工事現場の周辺への落下物に対する防護、工事用材料の集積の方法、火災の防止などについても、基準が定められています。
工事に従事する人の安全は主に労働安全衛生法などが、工事現場の周りを通行する人や近隣の人の安全は建築基準法が受け持つ、という役割分担で理解すると分かりやすいと思います。仮囲いの高さまで法律で決まっているのは、現場の外にいる人を守るためなのです。
工事中の建物を使う場合
雑則には、工事中の建物を使う場面についての規定もあります。
工事中の特殊建築物について、安全上、防火上、避難上著しく支障があると認められる場合には、特定行政庁が使用の禁止や制限などを命じることができます。また、一定の用途の建築物で、工事をしながら建物を使う場合には、あらかじめ工事中の安全上・防火上・避難上の措置に関する計画を特定行政庁に届け出る仕組みもあります。
以前取り上げた仮使用承認の話とあわせて読んでいただくと、工事と使用の関係が見えてくると思います。
→【関連記事:仮使用承認、用途変更には出てきません。】
守らなかったら、どうなるのか
では、これらの規定を守らなかった場合はどうなるのでしょうか。
工事現場の危害の防止(90条1項)に違反した者は、100万円以下の罰金の対象となります(101条)。
確認の表示や設計図書の備え置き(89条)に違反した者は、50万円以下の罰金の対象となります(103条)。
また、法人の従業者などがその業務に関して違反した場合には、行為者だけでなく法人にも罰金刑が科される、いわゆる両罰規定も置かれています(105条)。
なお、こうした行政上の義務違反に対する罰則は、わざと違反した場合だけでなく、うっかり違反した場合も対象になり得ると解されています。「知らなかった」「忘れていた」では済まされないということです。
まとめ
今回のポイントを整理します。
工事現場の確認看板や仮囲いには、建築基準法の裏付けがあります。看板を出す義務は工事の施工者にあり、着手の時点から表示が必要です。仮囲いの高さや落下物の防護といった安全措置も、施行令で具体的に定められています。そして、これらに違反すると罰則の対象になります。
建物は、完成した後だけでなく、つくっている最中から社会と関わっています。工事現場の「当たり前」が何のためにあるのかを知っておくことが、現場で働く人と周囲の人、そして自分たちを守ることにつながるのだと思います。
建築基準法の手続や規定についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。

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